資金・M&A深掘り

Apple決算、AIで稼ぐが巨額インフラ投資はせず 説明会でAI言及45回

Appleの2026年度9月期決算説明会でAI関連の言及が45回と過去最多に。CFOは複数の収益機会を挙げたが、直近四半期のCapExは22億ドルでAmazon・Alphabetの数十分の一にとどまる。

何が起きたか

Apple(アップル)は2026年11月2日(米国時間)、2026年度第4四半期(9月26日締め)の決算を発表しました。四半期売上は1145億ドルで前年同期比12%増、通期(2026年度)の売上は4790億ドルと過去最高、EPS(1株当たり利益)も二桁成長で過去最高を記録しました。The Vergeによれば、iPhone売上は前年同期比17.5%増の576億ドルで9月期として過去最高、Mac売上は24%増の108億ドルで4年ぶりの高水準でした。一方でメモリコストの上昇が年末商戦期の利益率を圧迫する見通しが示され、株価は3日の寄り付き前の時間外取引で下落しました。

なぜ重要か

決算説明会ではAIおよび「Apple Intelligence」への言及が45回に達し、金融情報サービスのAlphaSense(アルファセンス)によれば過去最多で、2024年6月にApple IntelligenceとSiri(シリ)刷新の計画を公表した直後の説明会をも上回りました。この説明会は、John Ternus(ジョン・ターナス)氏がCEOとして初めて臨んだものでもあります。CFOのKevan Parekh(ケヴァン・パレク)氏は「AIが収益成長に寄与する方法は幅広い」と述べ、製品の買い替えや乗り換えを促す効果に加え、サードパーティ製アプリや提携、自社サービスにも機会があるとしました。The Vergeは、端末そのものの販売、AIアプリの課金にかかる手数料、自社AI機能の追加利用の有料化という複数の経路があると整理しています。一方、AmazonやAlphabetがAIインフラへの大規模な支出を競う中、Appleは同等の額を投じていません。The Vergeの集計では、直近四半期のCapEx(資本支出)はAppleが22億ドル、Amazonが773億ドル、Alphabetが514億ドルで、いずれも全社ベースかつAI関連に限らない数字です。研究開発費の増加を含め、Appleの営業費用は21%増の192億ドルでした。巨額投資をせずにAI需要から収益を得られるかどうかは、インフラ先行投資の是非を測る材料になります。

背景

Appleは2026年4月、Tim Cook(ティム・クック)氏が会長(Executive Chairman)に退き、ハードウェアエンジニアリング担当上級副社長だったJohn Ternus氏が同年9月1日付でCEOに就任すると発表していました。今回はTernus氏がCEOとして臨んだ最初の決算説明会です。AppleのAI戦略は、自社で全モデルを開発するのではなく、オンデバイス処理・自社サーバー・外部AIを組み合わせる方針です。音声アシスタントの新機能「Siri AI」はGoogleのGemini(ジェミニ)技術をもとに開発したモデルを使い、文章作成や画像生成では外部AIプロバイダーを選べるようにする計画が報じられています。Siri AIは9月に米国英語版をベータ公開し、10月にはフランス語・日本語・韓国語・ポルトガル語・スペイン語に対応を広げました。サーバー側の処理を伴う機能には利用上限を設け、超えた利用者には追加アクセスを有料で提供する計画もあります。活用例として、Gap(ギャップ)が数百店舗の損失防止業務をMac Mini上のAIだけで処理し、クラウドのトークン費用を避けている例、Christie’s(クリスティーズ)がMac Studioのローカルモデルで価格推定業務を支援している例が紹介されました。

日本のビジネスへの示唆

  • 自社でAIモデルを開発・運用するだけでなく、ハードウェア販売・サブスクリプション課金・他社AIサービスの取次ぎ手数料など複数の収益源を組み合わせる発想は、大規模インフラ投資が難しい企業にも検討に値します。
  • 画像認識や分類といった非対話的なAI処理をオンデバイス・ローカルで完結させれば、クラウド処理費用を抑えられる可能性があります。GapやChristie’sの事例は、自社の業務システムにAI機能を組み込む際の投資判断の目安になりそうです。
  • 文章作成や画像生成で複数のAIプロバイダーを選べる設計は、特定ベンダーへの依存を避けたい企業のシステム選定でも注視したい視点です。

出典

毎朝のニュースレターを受け取る

その日の AI ニュースを、朝のメールでお届けします。無料で、いつでも配信停止できます。