アンソロピック、IPO控えた四半期で純損失233億ドル 売上は12倍の約170億ドルに
米アンソロピックの四半期売上高が前年同期の12倍の約170億ドルに達した一方、コンピュート確保などの費用が先行し、純損失は233億ドルに拡大した。新規株式公開(IPO)を控えるなかで、費用負担が上場の評価に影響する可能性がある。
何が起きたか
米アンソロピック(Anthropic)の直近四半期の業績が明らかになりました。ブルームバーグ(Bloomberg)によると、売上高は約170億ドルで、前年同期の12倍に拡大しました。一方、The Informationによると、運営コストは175億ドルに達して売上高を上回り、前の四半期に計上していた利益を打ち消す結果となりました。同四半期の純損失は233億ドルで、前年同期の121億ドルから拡大しています。アンソロピックは新規株式公開(IPO、企業が株式を証券取引所に新規上場すること)を控えており、これらの数字は上場を前にした時期のものです。
なぜ重要か
アンソロピックは対話AI「Claude」を中心に急成長を続けてきましたが、今回の数字は、その成長スピードを上回る勢いでコストが膨らんでいることを示しています。同社は損失拡大の主因として、短期的なコンピュート(AIの学習・推論に使う計算基盤)の確保に50億ドル、従業員による寄付に会社が同額を上乗せする「寄付マッチング」に20億ドルを投じたことを挙げています。IPOを控える局面での損失拡大は、上場時の評価や投資家の見方に影響する可能性があります。
背景
ニューヨーク・タイムズ(New York Times)によれば、アンソロピックは2025年末以降、コンピュート不足に悩まされており、Amazon、Google、SpaceXや半導体メーカー、さらには仮想通貨マイニングを手がけていた事業者などと数十件の契約を結んできたといいます。同社は今年中に3.5ギガワットを超える電力にアクセスできる見通しで、来年にはこれを倍増させる計画だとしています。更新された目論見書では、コンピュートとデータセンターの賃借に関する契約総額が8950億ドルに達することも示されました。こうした先行投資の重さを背景に、ニューヨーク・タイムズはIPOでの調達額が約1000億ドルに達する可能性があると報じています。日経アジア(Nikkei Asia)によると、このうち最大35億ドルは日本の投資家からの調達を見込んでいるといいます。
論点
急成長を続けてきたアンソロピックにとって、前の四半期に計上していた利益が今回の損失で打ち消された事実は小さくありません。収益化が軌道に乗り始めたとの見方もあったなかで、短期的なコンピュート確保や寄付マッチングといった費用がかさみ、再び大幅な損失に転じたことになります。こうした費用の振れ幅の大きさは、売上が伸びても収益性が安定するまでにはなお時間がかかることを示しているとみられます。IPOを控えるタイミングでこの点が明らかになったことで、投資家は同社の成長と収益性のバランスを一段と慎重に見極める必要が出てきたといえそうです。
日本のビジネスへの示唆
- アンソロピックのIPOには日本の投資家の参加も見込まれており、最大35億ドルの調達を見込むと報じられています。出資を検討する企業や機関投資家は、急成長と損失拡大が同時に進んでいる点を踏まえ、収益化までの時間軸を見極める必要がありそうです。
- Claudeを業務に組み込んでいる、あるいは検討している企業にとって、アンソロピックのコスト構造(コンピュートへの先行投資の大きさ)は、今後の価格体系やサービスの継続性を見るうえでの材料になります。ベンダー選定の際にはこうした財務動向も確認材料に加えておきたいところです。
- 生成AI業界全体でコンピュート確保の競争が激しくなっていることがうかがえます。AIサービスを提供・利用する日本企業も、電力やデータセンターの供給制約が価格やサービス品質に影響する可能性を想定し、複数のベンダーや選択肢を確保しておく価値があります。