モデル深掘り

Reka AI、テキスト・画像・動画・ロボット制御を1モデルで扱う「Rho-1」を研究プレビュー公開

米Reka AIが、テキスト・画像・動画・ロボット制御を単一モデルで処理する「Rho-1」の研究プレビューを公開。専用モデルを組み合わせる従来方式と異なり、全モダリティをトークンとして一つの仕組みで扱う点が特徴。

何が起きたか

米AI企業の Reka AI(リカ・エーアイ)は2026年10月5日、文章・画像・動画・ロボット制御を単一のニューラルネットワークで処理・生成できるモデル「Rho-1(ロー・ワン)」を研究プレビューとして公開した。パラメータ数は190億で、320基の NVIDIA H100 GPU を使い、ゼロから約3カ月間学習させたという。現時点では一般提供ではなく研究プレビューという位置づけで、Reka AI は協業先を募っている。

なぜ重要か

現在の多くの AI システムは、文章・画像・動画・ロボット制御といった異なる処理を、用途ごとに専用モデルを呼び出す仕組み(いわゆる「エージェント型パイプライン」)で実現している。Reka AI はこれに対し、すべてのモダリティ(データの種類)を「単一のコンテキストウィンドウの中でトークンとして統一」すると説明する。トークンとは、文章や画像をモデルが処理できる数値の列に変換した基本単位のことで、Rho-1 はこれを外部モデルの呼び出しを挟まずに扱う。そのため、動画を途切れさせずに生成し続けながら、新しい指示にその場で反応できるという。

計算効率についても、Reka AI は、320基の H100 GPU のみでゼロから3カ月学習したものであり、最先端の言語・動画モデルが使う計算量のごく一部にすぎないとしている。生成速度は、動画について0.79倍速(中央値、実時間に対する比率)で、視聴可能な映像が出力され始めるまで約6秒とされる。蒸留版(軽量化したモデル)では、5.3秒の動画クリップを約1秒で返し、プロンプトを少し変えた動画の再生成を1〜2秒程度で済ませる実演も示している。

背景

Reka AI はマルチモーダル AI への取り組みが今回初めてではない。2024年4月には、GPT-4・Claude 3・Gemini Ultra とベンチマークで競合したマルチモーダル言語モデル「Reka Core」を投入した経緯がある。

Rho-1 で注目すべきは、同じ重み(モデル内部のパラメータ)がカメラ映像の予測とロボットの動作制御の両方を担っている点だ。ロボット動作の学習データが乏しいという課題に対し、Reka AI は「逆動力学モデル」(映像から、その映像を生み出した動作の情報を推定する仕組み)を独自に構築し、ロボットではない通常のインターネット動画からも制御信号を抽出して学習に利用したとしている。実演では、LIBERO というロボットシミュレーション環境で、バナナを持ち上げる、マグカップをつかむ、スポンジを操作するといった家庭内タスクを扱い、観測映像・予測した手先視点の映像・7種類の動作チャンネルをすべて公開したという。

Reka AI は Rho-1 を現時点では研究プレビューとしてのみ公開しており、一般向けの API 提供などは明らかにしていない。フロンティア領域のアプリケーション開発者や、モデルの最適化基盤を構築する開発者との協業先を募っているとしている。同社自身も課題として、長い生成では映像の質感は保たれても部屋の構造などが途中で崩れること、動画内での物体の位置特定がまだ安定しないこと、動画の解像度が672×384に限られることを挙げている。

今回の公開は、現実世界の状態変化を予測しながら行動を決める「world model(ワールドモデル、世界モデル)」と呼ばれる研究分野が AI 業界で広がりを見せる流れの一端とみられる。

日本のビジネスへの示唆

  • 文章・画像・動画・ロボット制御を別々のモデルで組み合わせる「パイプライン型」の開発から、1つのモデルで複数のモダリティを扱う設計への移行が進む可能性があり、AI基盤を選定・開発する企業は技術動向として注視したい。
  • ロボットの動作学習に、ロボット専用データではなく通常のインターネット動画を活用する手法は、ロボット訓練データの確保が課題となっている製造業・物流業にとって、データ調達コストを抑える手がかりになる可能性がある。
  • 現時点では研究プレビュー段階で商用提供はされておらず、実務導入の検討は時期尚早である。ただし提供範囲の拡大や性能の検証が進めば、動画生成とロボティクスを一体で扱う基盤として今後の展開を注視する価値がある。

出典

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